沖縄戦のもうひとつの実相。 将口泰浩「魂還り魂還り皇国護らん」



沖縄で米軍と戦った第32軍司令官牛島(没後)大将の一生。

沖縄戦では民間人の被害が甚大だったが、大きな理由は二つある。

1つは、大本営の命令により1個師団を台湾防衛のために抜かれ、そのため民間人を召集せざるをえなくなったこと。牛島中将はこれに猛反発し、「沖縄を守らなくていいというのなら、今すぐ第32軍は全兵力を最前線のフィリピンに投入する」と、剛毅さを見せたけれども結局受け入れられなかった。民間人が戦闘地域で多数行動していたため、まきこまれてしまった。

2つは、疎開に法的強制力がなく、米軍の主攻撃が向かわない北部地域への疎開が不十分だったこと。軍隊は防御をする際、敵が必ず通る場所に陣地を構築するので、防御陣地のある場所は戦場になるのだ。それでも第32軍に守ってもらいたいとそばにいたため、かえって戦闘に巻きこまれることになった。

物語的に面白いのは、第32軍の頭脳が教育者型の牛島中将、熱血型の長参謀長、冷静型の八原参謀と言うトリオでできていたことだ。

特に長参謀長は破天荒過ぎて事実か疑いたくなるエピソードがある。

張鼓峰事件後の会談でソ連のシュテルン参謀長に会う前に、朝から酒を飲み、にんにくをいくつも食べていた長が握手を求めるとシュテルンはあまりの臭さに顔をそむけ、これが長の威圧感に押されたように見えた。

長参謀長、あまりにイカス。

もう一人の八原参謀は、ほかの参謀全員が総攻撃を主張するのに対し、今まで準備してきた陣地を捨てて攻撃するのは無謀であり、当初の予定通り持久すべしとただ一人主張した。結局総攻撃は失敗し、八原参謀の見積もりは当たっていたことが証明された。

八原参謀は牛島中将に「沖縄戦の実相を伝えるために生きろ」と命令されて降伏し、自伝も書いている。

海軍司令の大田中将は「沖縄県民かく戦えり。後世特別の御高配を賜らんことを」と打電して玉砕したことは有名だが、その沖縄と硫黄島という二つの戦いの結果が、本土決戦をアメリカに躊躇させた。

たった2つの島を陥落させるのに10万人以上の死傷者をだしたアメリカは、本土決戦では100万人以上の死傷者が出ると見積もり、本土決戦を前に日本軍の降伏を受け入れた。

現代の我々は、沖縄県民の敢闘を知り、称えなければいけないと思う。金だけくれてやっても、大田中将が頼んだ「御高配」にはならないだろう。



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