15歳で亡くなった妹の最期の言葉に、最大級の衝撃を受ける。 谷崎潤一郎「異端者の悲しみ」



「かあちゃん、……あたいうんこがしたいんだけれど、このまましてもいいかい」
「ああいいともいいとも、その儘おしよ」
母は我が子の最後の我が儘を、快く聴き入れてやった。(219ページ)


谷崎潤一郎の自伝的小説。
妹は肺病で、わずか15歳で亡くなるのだが、上記が最期の言葉である。
現実はドラマのように最期だと判ってかっこいいセリフを残すわけではない。
まだ自分が死ぬとは思わず、生きているときの要求を、それが最期とも知らずにする。

病床の身ながら生意気な妹を、主人公はどぎつい罵りを心で思うも、すべてを言うことはできない。
これもリアリティだなあと思う。
たとえ相手が肉親で、死ぬ間際だろうが、気に入らないものは気に入らないのだ。

病気の妹との禁断の愛と言えば、20世紀末に一世の一部を風靡した加奈であるが、ヒロインの最期の言葉が「うんこしたい」だったら相当物議をかもしただろう。

常々思うけれども、谷崎潤一郎は100年先の現代よりさらに先を行っている。



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「オールド・スパイダー」無料配布の結果。

6月25日1700~27日1700の間、餓獣の新発売を記念してオールド・スパイダーの無料配布セールを行った。
その結果、約100人がダウンロードしてくれた。

以前、海の記憶分冊版を無料配布したときには、約300人がダウンロードしてくれた。
しかし、実売への反映率はほとんどなかった。
また、その直後にはネット上でレビュー等を見つけることもなかった。

まあ現実を突きつけられた形になった。
それで、なぜオールド・スパイダー海の記憶よりダウンロードされなかったのか考えてみた。

中身を知らない読者がどこで判断するかと言えば、最初は表紙だろう。

オールドスパイダー表紙チェック用1memories1.jpg

さて、善男善女はどちらの中身を読んでみたいと思うだろうか。
結果として、海の記憶の表紙の方が集客率が高かった。

これは小説を書く目的に関わることなのだが、多くの人に読まれたいのか、自分が満足する本を作りたいのか、自覚していないといけないだろう。
オールド・スパイダーは物語的にヒーロー物のポップな表紙にすることも可能で、おそらくはそちらの方が手にとってくれる人も多いのだろうが、僕はこういう表紙を募集した。
そういう本を作りたかったからだ。

多くの人に読まれることを犠牲にして、自己満足を優先する。
まさに趣味、道楽である。
僕にとって小説を書くということはそういうものだと思っていた方が、物語創作だけで生きていくにはどうしたらいいのかなどの無用の悩みに囚われることもないだろう。

電子書籍を作りはじめて、今までは物語創作のみだったのが表紙を募集し、販促を考えるのが思いのほか楽しいと判った。
逆に、物語創作に費やす時間が減っているということでもある。
矛盾ではある。

我かくあるべしの自問自答は、まだまだ続くかもしれない。



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「餓獣」発売開始。

長々と前フリばかりしていて、一向に発売しない「餓獣」がついに発売された。

過去、ブログには掲載作品を紹介していたけれども、キャッチコピーとともに再度お知らせしよう。

○ 山で出会った全裸の女 「餓獣」

○ ゾンビに追われるかぐや姫 「地天の姫」

○ 童貞を捧げた少女を探す国家公務員 「彩」

いずれもタイプが違うが、どれを読んでも満足できるはず。
なぜなら、作者が改稿や推敲作業中に読みいってしまうのだから。

あえて作者のお気に入りを挙げるとすれば「彩」だろうか。
熊本に始めて来たときの瑞々しい感性と、中学生時代に考えていたことや妄想がブレンドされた、ある意味世に問うのに勇気がいる作品だった。
今や、かつて作品を公表するのが恥ずかしいと思っていた時代があったとは嘘のようだ。

次作では、自身の人間性の限界に挑んだ物語を発表するのだから。

ともあれ、これで「海の記憶」「オールド・スパイダー」「餓獣」と3作が出て、Amazonの著者ページもなかなか見応えが出てきた。
全部読んでくれた人がいたら、とても嬉しい。



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テーマ : 自作小説
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「餓獣」発売セールのお知らせ。

6月26日の「餓獣」発売に伴い、

「オールド・スパイダー」無料配布を25日1700~27日1700まで行います。



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「餓獣」ほぼ出版準備完了。

「餓獣」に掲載する短編3作の推敲・改稿がすべて終わった。
あとはあとがきと既刊情報を入れるのみ。

電子書籍を作るのは楽しいけれど、自分の目指すところである「書き続ける」が出版業務のために少なからず犠牲になる部分がある。
かといって、書きっぱなしでは世に問うことはできないし、自分の作品の価値を他人に決められてしまうような気がする。
カテゴリーエラーの作品を、価値あるものとして提供できるのは、自分しかいない。

単純に、書きたいことがたくさんあるので、限られた時間を書くことだけに使いたいだけのことかもしれない。



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ショタ、ロリ、SMの新しすぎた小説。 谷崎潤一郎「少年」



次第に光子は増長して三人を奴隷の如く追い使い、湯上りの爪を切らせたり、鼻の穴の掃除を命じたり、Urineを飲ませたり、始終私達を側へ侍らせて、長くこの国の女王となった。(70ページ)

主人公の少年は10歳程度で、金持ちの友達の家に遊びにいくと13歳くらいの姉、光子がいて、最初は光子をいじめることに悦びを感じていたのが、ある事件がきっかけで関係が逆転し、上記のようなありさまとなる。
しかし、少年たちは被虐の立場においても悦びを感じている。

Urineは、昔の官能小説にはよく出てきた表現だが、尿のことである。
この描写のないたった二行においても、13歳の少女が女王となり、10歳の少年たちに様々なことをさせている様子がまざまざと思い浮かぶ。
純然たる趣味で、ランサーズとかで「湯上がりの浴衣少女が美少年に足の爪を切らせている図」を募集したい。
実際金さえあれば目的を問わずやってくれるのだけれど。

谷崎潤一郎をじっくり読み始めたのは最近で、僕の書きたい方向性にかなり近いなと思った。
「少年」の初出は明治44年で、100年以上前である。
この時代には相当新しかったと思う。
新しすぎて、不当な評価も多かっただろう。
今ならラノベに分類され、大いに受けそうだが。



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7ヶ月ぶりの新作「餓獣」脱稿

6月26日に出す予定の電子書籍「餓獣」の表題作、「餓獣」を脱稿した。

たかだか21枚の短編だが、完成しない長編を書きながらの執筆だった。
来月には、この長編も脱稿する予定である。そして電子書籍となる。
そろそろ、これの表紙もコンペにかけたい。

これで「餓獣」に入れる作品は3本中2本が完成した。
あとは「綾」改め「彩」のリライトだけである。
なぜ名前を変えたかといえば、海の記憶の登場人物と整合させたかったからである。だから、主人公の名前も杉浦だったのが春田に変わっている。
予定通り、26日には出せるだろう。なお、「餓獣」発売記念イベントとして、何かを考えている。

それにしても、書き続けていたとはいえ、7ヶ月も新作を脱稿しなかったのは、やや志が低いかと我ながら思う。
現在、書いた全作品の総枚数は原稿用紙換算で約2,000枚である。職業作家として一皮剥ける目安は10,000枚らしい。

まだまだ先は遠いが、ただひたすら書き続けよう。



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小説界のドラえもんとのび太。 夢枕獏「陰陽師 蒼猴ノ巻」



安倍晴明と源博雅の25年にわたるコンビは、もはやドラえもんとのび太に匹敵する。

今巻では「首をかたむける女」が非常に美しい。
タイトルだけ見るとホラーに見えるが、そうではない。
晴明は出てこずに博雅だけの短い話だが、擬人化した自然、というより自然との文字通りの語らいが心洗われる。

赤い唐衣を着た女が頭をかたむけていくのだが、その正体が明らかになったときに、博雅が
「赤い唐衣を着ていたおかたはあなただったのですね」
と語りかける場面が特によい。
博雅の無垢さと雅(みやび)が余すところなくひとことに現れている。

晴明ではないが、いい漢である。


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夢を追い続け、自分を信じ続けることはかくも厳しい。 鯨統一郎「努力しないで作家になる方法」



タイトルのあとに「~は存在しない」が省略されているとしか思えない。
小説家を志して17年、鳴かず飛ばずでデビューできず、家族を抱えているが「今いるここは俺の居場所ではない」と信じ続け、ほとんど困窮生活に等しい小説を書き続ける生活。

よく奥様が許してくれるものだと思う。
我が家なら小説家になりたいので、自分を追いこむために定収入のある今の仕事を辞めたいなどと言ったら、即緑色の紙を叩きつけられるだろう。
「あなたの夢であなたが追いこまれるのは勝手だけど、家族まで巻きこまないで」と言われるのがオチである。

決して夢を捨てない主人公より、ときどきあきらめムードになりながらも亭主の夢に殉じようとする奥様が、現実味がない。こんな女房はいない。
けれども、自分だったら家族を夢に巻きこんで苦労させる罪悪感に耐えられないかもしれない。

まあ、定収入があるおかげで美麗な表紙を頼めたり、限られた時間を効率よく使おうと意識したり、職場でなければ得られない経験や出会えない人もいたりして、思えば悪くない。なにより、暮らしに困らないということで得られる精神的安定が大きい。

背水の陣は、敵を突破できなければ全滅か溺死である。突破できる公算が立つまで、雌伏の時代でいいのではないか。



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「餓獣」の表紙決定。

「餓獣」の表紙が決定した。

タブリングさんのこの提案である。

餓獣1-1

● 山奥の渓流の岩に全裸の女が座って正面からこちらを見ている(いわゆるカメラ目線)
● 女は山の神で、見た目は20~28歳、色白、赤い唇、口が大きい、脚を組んでいる、ウェーブのかかった黒髪、吊り目、口を開けずに笑っている、無垢だけれど邪悪な感じ

以上の条件で提案を募集したのだが、よくここまで完全に具現化できるものだと感動する。
特に20代女性なのに無垢で邪悪とか相当難しいはずだ。
あと、山の神という設定を十分に認識してもらっていて、そのことによって琴線にふれる部分が共有されたと思う。

実はタブリングさんは海の記憶でも表紙を提案してもらっている。

海の記憶24-4

こうして見ると、青を使うのが上手なのがよく判る。

以前紹介したときには

>何度も提案の修正を出してくれて、申し訳なくなるほど熱意があった。全般の構図は要望を100%満たしていると言える。本当のところ、最後の最後まで迷った提案だった。

と書いているが、このときから要望を100%満たせるひとだったのだ。

さて、この美麗な表紙の「餓獣」は6月26日発売を目標に作業をしている。
表題作「餓獣」、かぐや姫ゾンビSF平安ホラー「地天の姫」、ノスタルジックミステリー「綾(仮称)」の3本立てで提供する。
お楽しみに。



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Author:原田 修明
小説を書くオッサン。
少なくとも、一生書こうとは決めた。

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