「とと姉ちゃん」から学ぶ

正直なところ、今期朝ドラの「とと姉ちゃん」の父親の態度に圧倒される。

高々10歳の娘に、父親である自分の死を背負いきれないとは判っていても、あるいはこの子なら背負えるかもしれないとは信じているからこそ、最期のときには幼い娘としてではなく、自分の意志を継ぐ者として伝えたいことがあるのだと、思いを告げる姿に物語創作者としてももちろんだが、ふたりの子供を持つ親としても激しく心を揺さぶられた。

思い返してみれば、自分がもっとも心を動かされるシチュエーションは自己犠牲の場面である。マズローの欲求5段階の6段階目と言われる他者のために自己を捧げたいという要求において、物語の中で印象的なのはインドネシア独立戦争を舞台にしたムルデカという映画だった。

17世紀から300年間オランダの植民地だったインドネシアを日本が占領し、国民に戦う技術と精神を10年足らずで叩きこんだ。敗戦により日本が撤退した後、再度植民地化しようと試みたオランダに対して、もはや戦う義務もない日本人が多数残り、インドネシア独立のために戦った。

映画の最後は、独立を獲得したインドネシアの指導者たちが、生きて故郷に帰れたはずなのに他国のために戦って死んだ日本人の墓に敬礼するところで終わる。

事実は小説より奇なりというありふれた言葉を否定できる小説が、まだ歴史上生まれていないことを実証する歴史的事実である。現代のエンタメのニーズはそこにはないという言説もよく眼にするが、作者自身が心を動かされないものを書いたとして、いったい読者が感動するものだろうか。このテンプレートさえ仕込んでおけば、大抵の多数派は満足するだろうという姿勢を、著作者が持っていいものだろうか。

少なくとも、自分が心動かされない物語を、他者に提供したくはない。そしていまだ、自己犠牲をテーマにした物語を書いていないことに気づいた。



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