自分が15年前から、日記を書き続けていたことを思い出す。

押入れの中を整理していたら、引越し以来5年間放置している段ボール箱があった。
開けてみると、中から出てきたのは15年前から大学ノートに書き続けていた日記だった。
数は優に15冊以上あった。
奇妙なことに、僕は5年間この日記の存在を忘れていた。

今は、ひとつのノートに読書記録、予定、アイデア、そして日記をつけていて、これまた15冊以上ある。
僕の記憶は、このノートからしかなかったのだ。
押入れに放置されて湿った大学ノートを繰ってみると、それはほぼ苦悩に満ちていた。
この状況なら、何が何でも小説で生きていこうと決心するだろうな、と自分でも思う。

特にすさまじかったのは、ノートの表紙と裏表紙を破りとった、裸の状態のノートだった。
生々しい記憶が、多くても5行以内にまとめられていて、字は乱れている。
受けた屈辱の詳細な文言や、相手の表情までが書いてあった。
それがおよそ、10か月にわたっていた。

あれは地獄だったのだ。
地獄は心の中にある。
東日本大震災のように地上に顕現する地獄は、心の荒野の姿である。
心の中にあるものだから、他人はその人が地獄にいることに気づかない。

僕は、その道を歩いてきたことを忘れてしまったのだ。
たぶん、明日を見るためには必要のない記憶だからだ。
過去を振り向いている限り、その視線の先に明日はない。
生きているかぎり、黙っていても未来に進んでいく。
前を見ていなければ、行きたいところにはいけないだろう。

この日記は、死ぬまでとっておきたい。
死んでからは好きにすればいいが、家族の不和を招かないことを祈る。
関連記事

テーマ : 物書きのひとりごと
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

カウンター
プロフィール

原田 修明

Author:原田 修明
小説を書くオッサン。
少なくとも、一生書こうとは決めた。

リンク
発売作品
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
最新コメント
電子書籍の表紙依頼に使ってます。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ランキング